『ミニヴァー夫人』 (1941/米)

★★★★★★

監督:ウィリアム・ワイラー
出演:グリア・ガーソン/ウォルター・ピジョン/テレサ・ライト/

ディム・メイ・ホイッティ 他

【STORY】
ミニヴァー夫人の息子ヴィンは、大学で社会主義に目覚め当地の名門家の娘キャロルに対して議論をもちかけ、そこから恋に発展するが、花の品評会の主催者でもある祖母のぺルドン夫人は二人の恋に猛反対した。しかし、戦争が夫人の考えを変え、二人は婚約。そしてすぐにヴィンは出征した。一旦帰ってきたヴィンとキャロルは結婚、その後花の展覧会が行われる。ミニヴァー夫人に促されて、ぺルドン夫人は自分の独壇場であったはずのバラ部門の賞を駅長に与える。しかし、その後悪化する戦況で、ミニヴァー邸は・・・。

<感想>

イギリスのとある村にスポットを当てて作られた、戦時中のお話である。

オープニングは村で一番の美しい夫人、ミニヴァー夫人が買い物を楽しみ、列車に乗って帰ってくる。

旦那も旦那新車を買ってしまったことをどう妻に話そうかと思案している。

という今も昔も変わらない夫婦のやり取りで始まる。何ともほんわかとした映画である。

そんな時、息子が空軍に志願して入隊することになるという流れだ。

この映画では戦争の怖さが色々なところで感じられる。

例えば幼子とともに防空壕のような所に隠れ、寝泊まりしているのだが、音や爆撃によって今にも壊れそうに揺れまくったり、子供が泣き叫んだり。

実際爆撃機の映像を見せるよりも、心理的に怖さが募ってきた。

また村も日に日に壊れていき、自宅も教会もひどい状態になっていく。

でもこの映画のすごいところ、彼らのすごいところは、そんな状況なのにすごく明るく前向きな姿勢であるというところだ。

他の戦争映画ならもっとどよ~んと重たい空気になるところを、実にあっけらかんと皆が過ごしているのが微笑ましかった。

こんな時期だからこそ、バラの品評会をやってみたり。

ただやはり終盤、戦争による犠牲者が出たあたりは、悲しかった。

それも志願した息子ではなく、その息子の新妻が犠牲者となったり、バラの品評会で優勝した者だったり…。

妻のことを知った息子が部屋の中に入って行く際の、カメラワークは見事だった。

階段下から2階にカメラを向け、部屋に入って行く際、本人を映し出すのではなく、閉まるドアの影とそのスピードで、見事にその息子の心情を表現していた。うまいなぁ~と思った。

最後も暗く締めくくるのではなく、あくまで前向きな感じがし、なかなかよく出来た作品だと思う。